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玉川福太郎~第6回 新人コンクール

 

新人コンクール
 さらに1974年(昭和49年)の第二回浪曲新人コンクールで最優秀賞を獲得する。その模様を「浪曲ファン」第31号(昭和49年10月号)から抜粋する。会場は内幸町のイイノホールだった。
 「今回の決勝進出は玉川勝美『平手造酒の駈けつけ』、玉川忠士『若き日の大岡越前(阿漕ヶ浦)』、天中軒鵬『天野屋利兵衛』、阪東紫『中村仲蔵の愛』、三門昇『雲水吉五郎』の五人で、最優秀賞に玉川忠士、優秀賞に阪東紫が選ばれた。忠士、紫は昨年につづいて二度目の決勝進出で、共に予選から評判が高かった。審査員は小沢昭一、神保国久(日本浪曲協会事務局長)、中川明徳(浪曲作家)、秩父重剛(浪曲作家)氏のほか浪曲木馬会・後援友の会から静岡の池田さんら五人が陪審員の形で出席、参考意見を述べた。審査は全員の口演終了後行われ、その間、昨年度最優秀賞受賞の沢孝子が『会津の士魂』でご機嫌をとり結び、表彰は十分間の休憩のあと舞台で行われた」「最優秀賞の忠士は、さすがに男性でかなり落着きをみせていたが、やはり喜びを隠せず、一瞬ニコリと笑みをみせ、沢孝子からトロフィーを受けた時、それを高く掲げて聴衆にみせ、まるでボクサーがKO勝ちを収めたときの様子そっくりだった」
 忠士は「ダメだと思っていましたがお陰さまで、雲の上に乗っているような気持ちです」と喜びを表している。この時、審査員の秩父重剛は「うま味はこれからだが……久し振りに骨の太い、大型の新人が出た」と評価した。大正から昭和初めにかけて活躍した初代木村重友、その弟子の初代木村友衛は豊かな声量で大音を張り上げる関東節で大衆を魅了した。その後継者となるだけの期待を抱かせるものが忠士の若さあふれる大声にはあったのだった。

 
木馬亭で勉強会
 「浪曲ファン」第35号(昭和50年2月号)の特集「ことしの抱負」に忠士は次のような一文を載せている。

昨年はNHKコンクールで最優秀賞をいただき、本年は生意気のようですが、自分の声帯にあった節を身につけるべく一生懸命に努力するつもりです。幸い木馬亭の賛成を頂き二月より第一日曜午前十一時から勉強会を木馬館でさせて頂きます。四、六、八、十、十二月の六回です。何卒、御来館の上、御批判下されば幸せです。(「浪曲ファン」35号 昭和50年2月号)

 

 忠士は浪曲研究家、芝清之の仲介で立川談志から、これからの浪曲はどうすればよいかというアドバイスを受けていた。「名人そっくりに演じることから始めたらいいだろう」という談志の提案に従い、寄席の名人といわれた浪曲師たちのテープを芝に聴かせてもらう。特に気に入ったのが港家華柳丸の「青龍刀権次」八席だった。声と節はたいしたことはないが、わかりやすく、テンポがよくて面白い。「こういう浪曲もあったんだ。この浪曲を今の時代に演じてみたらどうだろう。やりこなせたら俺も浪曲で生きていけるかも知れない」と思った。このテープはスタジオでの録音をラジオで放送したものだった。拍手も笑い声もないが、聴いていて実に楽しい。それまで忠士は浪曲大会での浪曲しかほとんど知らなかった。初代京山幸枝若、初代東家浦太郎、三代目勝太郎などを聴き、大会でも楽しさあふれる浪曲があることは知っていた。また、「青龍刀権次」は初代相模太郎の実演を聴いており、面白いネタだなと思ってはいたが、華柳丸の録音にはそれらを上回る楽しさと衝撃があった。演者自身が楽しくなければ、お客さんも楽しくないに違いないと、目を見開く思いがした。やはり寄席芸を勉強しなくては……、寄席でうまいと言われた人の芸が真似できないうちは浪曲師として半人前だと思い至り、「青龍刀権次」の連続口演を勉強会で行うこととした。

 
「青龍刀権次」
 青龍刀権次は主人公の名前がそのまま演題となっている。勇ましさを感じさせる名だが、まるで正反対。ドジばかり踏んでいる男だ。時代は幕末。侍が芸者を斬り殺すところを目撃した権次がそれをネタに侍をゆすろうとするものの、逃げられてしまい、権次だけが五年の刑期をつとめることになる。出所した時は明治になっていた。再び男に出会うことができ、金をもらえたが、にせ札だったために、またもや七年間、牢に入れられてしまう。
 忠士は世渡りが下手な権次に好感を持った。自分自身、花形の演芸をやっている訳ではないという思いがあるので、自分とどこか似ていると感じて愛着を持った。勉強会では毎回二席ずつ演じ、八席全部演じたが、すべての回が面白い訳ではないことも理解し、四席にしぼり、勉強会で演じ終えてからもさまざまな場所で口演し、「玉川福太郎の『権次』」として練り上げていった。

 
芸人伝_玉川福太郎第6回_玉川福太郎プロマイド
玉川福太郎ブロマイド
 
芸人伝_玉川福太郎第6回_玉川福太郎、勝太郎、木馬亭
玉川福太郎、勝太郎、木馬亭にて

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