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第3回 .「東京コミックショウ」結成

 

「東京コミックショウ」結成
 ショパン夫人の千重子は1932年(昭和7年)に千葉県館山市の裕福な家庭の7人兄弟の末っ子として生まれ、日本舞踊やバレエを習い、ダンスチームに入って活動していた。ショパンとの出会いは丸の内ホテルのショーに出演したことだった。好意を抱いたショパンが4年半もの間、千重子の家を連日のように訪問し続けた。プロポーズは新宿駅の陸橋の上。手すりに足をかけ、「断わられたら飛び降りる」と迫った。1955年(昭和30年)に結婚。新居は浅草橋の小さな印刷屋の二階の八畳間だった。千重子の実家から余り物の日用品を運び、ミカン箱を茶だんす代わりにして茶碗や箸を入れた。ショパンは仕事がほとんどなく、千重子は長女の出産直前までダンサーの仕事を続けた。しかもその収入だけではやりくりがつかず、独身時代の貯金も底をついた。千重子は初めて質屋通いを経験した。
 東京宝塚劇場で越路吹雪、榎本健一のミュージカル「お軽と勘平」が企画され、殿様の御前で女子プロレスをする場面にパンや定子らが出演することになる。ショパンにはお呼びがかからず、一ヶ月間、遊んで暮らす羽目に。長女が生まれた時にはまったく金がなくなり、千重子の実家に同居させてもらう。
 そのままパンが日劇ミュージック・ホールの専属となったため、「パン・スポーツ・ショー」は解散。ショパンは独り立ちせざるを得ず、相方を探してはコンビを組むが長続きしなかった。千重子は深夜、ほおかむりをして酔客相手にトウモロコシを売った。
ショパンに転機が訪れたのはパンから紹介されたエノケン(榎本健一)一座の古株、鯉口潤一とコンビを組んでからだ。コンビ名を「東京コミックブラザース」とし、次々と新しいネタを作ってキャバレーまわりを始めたところ、順調に仕事が取れるようになり、沖縄の米軍キャンプを巡回する仕事の依頼も来た。ショーの時間は45分。自信はなかったが、無理に引き受けた。しかし甘くはなかった。
 
 ネタをそのままやっていたのでは、どんなに長くやっても、45分なんてもたない。苦しまぎれに、お客の外人と話をしてみた。もちろん、大部分はいいかげんな英語の出たとこ勝負だ。でも、いいかげんならいいかげんなほどお客はゲラゲラ笑う。そうか、お客と遊べばいいんだ。これだったら何分でもできそうだ。これが大きなきっかけだった。そしてこのとき、俺のデタラメ英語・ショパンイングリッシュも生まれた。  『レッドスネークCOME ON!』
 
 芸達者な鯉口からは芸を学ぶことができた。「いままで俺が手本としたのがパンさんだけだったことを考えると、鯉口は第二の師匠とも言えるかもしれない」とショパンはつづる。鯉口は作家の才能もあり、台本を次々と書き上げた。「珍場所大相撲」「お猿の曲芸」「日本武士道チンピラ物語」「珍浄瑠璃 三勝半七」などなど。ショパンがそれをコンパクトに仕上げる。鯉口が台本の一字一句の狂いもなく舞台を進めていくのに対して、ショパンは観客の反応を見てアドリブで好き勝手なことをやって時間を持たせることを覚えた。
ヘビの芸もこうして生まれた。当初、籠は一つで、笛を吹きながら笛の先に付けた針で布製のヘビを引っ掛けて吊り上げるだけだった。鯉口はこれに子供の時に見たのぞきからくりの仕掛けをヒントにして改良を加えた。手品の台に穴をあけて籠をのせ、ヘビの形の手袋をはめて鯉口が中に入った。
 この芸の衣装は千重子が担当した。千重子はそれまで裁縫ができなかったという。
 
 型紙の取り方なんて知ってる訳がありません。唯々直線に縫う、真直ぐに縫う。ズボンもチョッキも直線に縫う。想像してみて下さい。ダボダボのチョッキで、体に合うはずありませんものね。でもそれがファースト・キャラクターにピッタリだったのですから可笑しなものです。それが最初の衣装で、ヘビのショーは最後までこのズボンとチョッキのスタイルで通すことになるのです。
『スネークショウの箱の中』

 
 ショパンは襟元が汗や垢で汚れていたりしないよう、着替えも持ち歩いた。きちんとした身なりをすることが自分たちの地位向上にもつながると考えていたのだ。千重子は次々と衣装を作るたびに工夫を重ね、2、3年後には、「どこの衣装屋に作ってもらったのか」と尋ねられるほどに腕を上げた。
 仕事運が向いてきたショパンはコンビ名を「東京コミックショウ」と変えた。ゆくゆくは人数の多い本格的な笑いのチームにしようという思いからだ。桜上水に自宅を新築し、応接間を事務所兼用とした。こうして個人事務所を設け、マネージャーも雇った。
 

 

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