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横浜にぎわい座は、落語、漫才、大道芸などの大衆芸能の専門館です。

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第8回.悲しみを越えて

 

悲しみを越えて
 2016年(平成28年)2月3日、浅草ビューホテル「飛翔の間」で「国本武春 お別れ会」が開かれた。正面に遺影と祭壇。壇上には愛用のテーブル掛けセットが飾られた。後方の壁面には木馬亭前でインタビューを受ける映像や20代の頃の映像が映された。思い出の写真も掲示され、武春のオリジナル曲が流れる。1000名収容の会場は立錐の余地のない人々でにぎわった。柴田理恵、小錦八十吉など芸能関係者もいれば、ファンもいる。演芸関係者も、ジャンル、年齢を問わず訪れていた。春風亭昇太、三増紋之助など同世代の者もいれば、三代目三遊亭圓歌、四代目三遊亭金馬といった重鎮の姿もあった。
 仕事仲間が次々に弔辞を述べる。他界して40日が過ぎても現実が受けとめられない様子がよく分かる。劇団ラッパ屋の鈴木聡が述べた「武春さんは浪曲、演劇、音楽、いろんなエンターテインメントの交差点になれる人」という言葉が印象深かった。
 武春のめざましい活動の原点である「うたざいもん」で共演した津軽三味線の佐藤通弘が津軽三味線奏者となった息子の佐藤通芳と演奏をする。通芳は武春からも三味線の手ほどきを受けており、この日、武春の「アパラチアン三味線」も演奏した。そしてNHKテレビ「にほんごであそぼ」で武春が演じた、うなりやべベンの一番弟子、うなりやミッチェルとして現在、番組を引き継いでいる。
続いて、武春の学生時代のブルーグラスバンド「寿ブラザーズ」の海宝弘之や九州在住のエルビス吉川などが一日だけのバンドを結成し、「ケンタッキーの青い月」などを演奏する。
 映像で武春の『大浦兼武』『紺屋高尾』『ザ・忠臣蔵』も流れる。素敵な「追悼ライブ」となった。
 

 
武春よ、永遠に
 当館の「国本武春追悼公演  TAKEHARU FOREVER」は2016年(平成28年)8月8日に開かれた。開場時に武春のオリジナルソングが流れて始まった公演は次の通り。
 
冗談音楽 ポカスカジャン
『カマ手本忠臣蔵』 柳家喬太郎
江戸曲独楽 三増紋之助
『リストラの宴』 春風亭昇太
— 仲入り —
紙切り 林家二楽
座談会 楽屋一同
映像出演 国本武春 平成17年6月1日開港前夜祭「国本武春&ザ・ラストフロンティア」から
 
 出演者以外の演者からも「追悼公演があるのなら」と声を掛けていただいたが、日程などの都合でこのような内容となった。玉川奈々福は「何でもします」と手伝いを買って出てくれた。
 出演者は思い思いの形で高座をつとめた。なるべく明るくさわやかに追悼をという趣旨であったが、二楽は武春への思いを込めたストーリー紙切りであふれ出る涙を止めることができなかった。武春が旅立った12月24日、訃報はアメリカにいるThe Last Frontierのメンバーのツイッターで世界中を巡った。時差の関係で日本は早朝だった。新聞各社は朝から大騒ぎとなり、速報が流れた。訃報を知った二楽は「クリスマスイブにこんなことがあってよいものか」と悔し涙に暮れた。
 追悼公演は、にぎわい座が感動のるつぼと化した「ザ・フロンティア」公演における武春の舞台をスクリーンに映し、再び場内が大きな感動に包まれて終演。
と思わせて、サプライズゲストが登場。武春の母堂、国本晴美である。息子を亡くした寂しさを率直に語った後、『瞼の母』を澤順子の三味線で演じる。再会がままならない親子の物語が晴美、武春親子と重なり、会場は静まり返った。

 
浪曲への思い
 私が武春と話をしたのは2015年(平成27年)2月の「神田京子真打昇進披露公演」が最後となった。この時、第3回、第6回で紹介した初代篠田実の『紺屋高尾』の実況録音を私が所蔵していたので、その音源を渡した。私はこの録音を何年かおきに聴いていたが、聴くたびに印象が異なることを話すと興味深そうに耳を傾けてくれた。そして、「このようにはまだまだ行かない。自分でも情けなくなる。浪曲は難しい」とつぶやいた。『紺屋高尾』はすでに武春の十八番ネタという評価が固まっているのに、道半ばだという謙虚な思いをいだいて芸と格闘している。武春の浪曲への思いは若い頃とまったく変わっていなかった。
 武春の八面六臂の活躍を見て、「浪曲界の異端児」と表現する方がいるが、それは違う。武春は大好きな浪曲の魅力を今の世に広めたくて活動の幅を広げた。「浪曲界の風雲児」なら表現として間違いはない。その遺志を後輩たちが受け継ぎ、浪曲界も少しずつ活気づいてきている。彼が一人何役を担っていたようなことはもうする必要はなく、それぞれが自分の得意分野で研鑽を続けている。
 
国本武春(くにもとたけはる。本名=加藤武)浪曲師。1960年(昭和35年)11月1日-2015年(平成27年)12月24日。55歳。

当館の出演記録
2002年(平成14年)4月19日昼夜 立川志の輔らくごじゃん
2002年(平成14年)5月6日 にっぽんの芸色いろ ~エクセレント~
2002年(平成14年)11月10日 立川流演芸会
2002年(平成14年)12月1日 忠臣蔵三百年~演芸篇~
2003年(平成15年)7月6日 国本武春の日本開国150周年
2004年(平成16年)10月9日 国本武春 凱旋記念公演
2004年(平成16年)12月7日 国本武春の大忠臣蔵
2005年(平成17年)4月6日 楽太郎・昇太・武春 三人の会
2005年(平成17年)5月3日 国本武春と楽しい仲間
2005年(平成17年)6月1日 開港前夜祭 国本武春&ザ・ラストフロンティア
2005年(平成17年)10月7日 武春たっぷり弾き語りのすべて
2005年(平成17年)11月9日 にぎわい忠臣蔵
2005年(平成17年)12月1日 武春のにぎわいバラエティ
2006年(平成18年)1月7日 初春 ふくふく演芸会
2006年(平成18年)4月5日 国本武春 お花見ライブ
2006年(平成18年)7月29日 夏休み!にぎわい座ファミリー演芸会
2007年(平成19年)1月7日 にぎわい座新春競演!
2007年(平成19年)6月2日 国本武春・菊地まどか浪曲と河内音頭と三味線弾き語りの会
2007年(平成19年)11月9日 日本演芸家連合まつり~東の芸人横浜大集合!夜の部
2008年(平成20年)1月6日 新春特選演芸会
2008年(平成20年)2月10日 武春・山陽・二楽・紋之助の会
2008年(平成20年)3月1日 東西浪曲競演
2008年(平成20年)5月2日 横浜女学院芸術鑑賞会
2008年(平成20年)7月6日 国本武春・菊地まどか 浪曲と河内音頭と三味線弾き語りの会
2008年(平成20年)10月4日 東西浪曲競演
2009年(平成21年)2月6日 マギー司郎 あした順子・ひろし 国本武春の会
2009年(平成21年)5月2日 武春・市馬・二楽・紋之助の会
2009年(平成21年)7月5日 国本武春・菊地まどか 浪曲と河内音頭と三味線弾き語りの会
2010年(平成22年)1月4日 新春特選演芸会
2010年(平成22年)5月8日 国本武春と楽しい仲間たち
2010年(平成22年)8月8日 横浜にぎわい座 東西浪曲特選
2010年(平成22年)9月8日 日本演芸家連合まつり~玉置宏 初代館長を偲ぶ~ 夜の部
2011年(平成23年)5月8日 爆笑演芸バラエティ
2011年(平成23年)9月13日 日本演芸家連合まつり
2011年(平成23年)10月15日 横浜にぎわい座東西浪曲特選
2012年(平成24年)1月15日 新春!爆笑演芸会
2012年(平成24年)4月10日 三遊亭白鳥創作落語集~三遊亭白鳥独演会
2012年(平成24年)6月9日 国本武春独演会
2013年(平成25年)9月3日 日本演芸家連合まつり
2014年(平成26年)9月10日 日本演芸家連合まつり
2015年(平成27年)2月15日 神田京子真打昇進披露 あっぱれ横浜公演
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2016年(平成28年)8月8日 国本武春追悼公演  TAKEHARU FOREVER
 

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