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東京コミックショウ~第1回 御存じ「レッドスネーク、カモン!」

 

御存じ「レッドスネーク、カモン!」
 東京コミックショウといえば、御存知、ヘビのショー。
 
 インドのヘビ使い姿のショパン猪狩が両手を掲げて挨拶をする。
途端にズボンがずり落ちて、へそが見える。笑いが起こり、場内はなごやかな雰囲気に。
舞台には腰ぐらいの高さの台があり、向かって左から、赤、黄、緑のザルが伏せてある。
 
 「まずはレッドスネーク」と述べて縦笛を吹くと赤いザルがふたのようになっており、赤ヘビが現われて口をパクパクさせる。
このヘビは鍋つかみを細くしたような手袋に目を描いたもの。台の中に人が入り、手を動かしてヘビの口を開けたり閉じたりする。クネクネしながら口をパクパクさせる様子は愛嬌たっぷり。
 「スローダウン」と言うと、ヘビはザルの中へ。「ちょっと出ておいで」。再び顔を出す。「あなた、ナイスジェントルマン。プリーズ、シャット、ザ、ドア」と言ってまた笛を吹く。吹き終わると同時にヘビがザルを閉じるタイミングの良さが爆笑に。
次に緑のヘビとやりとりし、最後に黄色いキングコブラを呼び出す。「台湾で生まれた、北海道はニシン場育ち、よさこい、こい、こい」。
笛を吹くと、シッポから出てくる。やり直しを命じると、今度は顔から。メガネを掛けた丸顔だ。3匹の紹介が終わると、観客に好きな色をリクエストしてもらう。「赤」という注文には「絶えず人間は燃えていなければいけません」、「緑」なら「交通法規を守りましょう」と答える。
 注文通りのヘビが出ることもあれば、出ないこともある。
 
 ショパンの英語まじりの話術には親しみやすさがあり、観客の気をそらさない。
 リクエスト通りのヘビが出たのを見て、「このあいだ、縁起もんだと言って五千円くれたな」とヘビに話しかける。「ウン」とうなずくヘビ。「冗談、冗談」と客ににこやかに語りかけるが、すぐに「冗談て言ってもくれたお客さん、いたな」。ヘビが「ウン」。今まで以上の笑いが起きる。
 最後は3匹一緒に登場させようとする。ところが赤と緑は出てくるが、黄色が出てこない。ザルをたたくと「あ、痛」といって女性が顔を出す。ショパンの愛妻、千重子夫人だ。テレビでもよく見かけた芸である。

 

(東京コミックショウ関連書籍)
 東京コミックショウの歩みを知るにはショパン猪狩の『レッドスネークCOME ON! 笑いの王様 東京コミックショウの誕生まで』

 
 猪狩千重子が妻の立場から記した『スネークショウの箱の中』(三一書房。1995年発行)がある。
ショパンの聞き書きには『季刊藝能東西 螢夏号』(小沢昭一編集・発行人。新しい芸能研究室。1975年発行)所収「流民の芸の系譜 ショパン猪狩へのアプローチ」(インタビュー+構成 鎌田忠良)と『芸バカ列伝』(山下勝利著。旺文社文庫。1985年発行)。
 吉川潮も『わが愛しの芸人たち』(河出書房新社。2003年発行)、『完本・突飛な芸人伝』(河出文庫。2006年発行)、『芸人という生きもの』(新潮新書。2015年発行)などでショパン夫妻の芸と人柄について愛情を込めた筆致でつづっている。『完本・突飛な芸人伝』と『芸人という生きもの』には当館での公演の模様も記されている。
 さらにショパンの兄で、師匠でもあるパン猪狩の芸談『パン猪狩の裏街道中膝栗毛』(滝大作著。白水社。1986年発行)も参考資料となる。プロレス専門誌『Gスピリッツvol.26』(タツミムック。2013年発行)所収「リビングレジェンド対談 50年ぶりの再会 ユセフ・トルコ×猪狩定子」はコミックショウ結成前の猪狩兄弟のスポーツショーの模様を知る助けに。また同誌vol.49(2018年発行)所収「『日本最大のショウ』は、実際に行われたのか-。昭和28年10月24~25日 蔵前国技館」は猪狩兄弟が手掛けた女子プロレス興行の実態を知ることができる。
 

第2回

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